第188章:悪だくみの心も勇気もない

待つ時間はいつも長く感じる。

午後三時過ぎになってようやく、手術室のドアの赤いランプが消えた。

ドアが開き、二人の看護師がストレッチャーを押して出てきた。細田登美子は目を閉じたまま、動かずに横たわっていた。

馬場絵里菜、馬場輝、古谷隆明の三人は急いで近寄った。看護師は彼らを見て「ご家族の方、ご安心ください。手術は非常に順調でした」と言った。

皆はほっと一息つき、そして宮原重樹がマスクを外しながら出てくるのを見た。馬場輝は興奮した様子で前に出て感謝の言葉を述べた。「渡辺ドクター、本当にありがとうございました」

そう言いながら、目に涙が浮かんでしまった。

渡辺ドクターが大丈夫だと言い続けていても、息子として完全に安心することはできなかった。今、手術が成功し、馬場輝はようやく心の重荷が下りた気がして、感動で涙が出そうになった。

宮原重樹はいつもと変わらず冷静で、ただ馬場輝に軽く頷いただけだった。

他人がいる場で、宮原重樹は馬場絵里菜をちらりと見ただけで、特に話しかけることもせず、看護師に細田登美子を集中治療室に移し、二十四時間観察するよう指示した。

これは病院の手順に従っただけのことで、宮原重樹が手術した患者は観察の必要がないことは周知の事実だった。

集中治療室には家族も入れず、細田登美子が中に運ばれた後、皆は外で待つしかなかった。

「古谷おじさん」馬場絵里菜は古谷隆明の前に歩み寄り、「こんなに長い間付き添っていただいて、母も大丈夫そうですから、もうお帰りになられては?後輩として、こんなにご心配とご迷惑をおかけして申し訳ありません」と言った。

古谷隆明はガラス越しにベッドに横たわる細田登美子を見て、胸が痛んだ。しかしその感情を表に出すことはできなかった。皆の目には、彼と細田登美子は友人関係でしかなかったのだから。

彼は若くして妻を亡くし、細田登美子は未婚で子供を産んだ。二人の付き合いには慎重にならざるを得ず、そうでなければまた噂が立つことになる。

自分のことは気にならなかったが、細田登美子に辛い思いをさせたくなかった。

そこで頷いて「わかった。じゃあ先に帰るよ。何かあったら連絡してくれ」と言った。

馬場輝が古谷おじさんを見送りに行っている間に、馬場絵里菜は宮原重樹のオフィスへ向かった。

「門主」