第203話:まさかアイドルのファンだったとは

夏目沙耶香は馬場絵里菜に兄がいることを知っていたが、その場で確認するように小声で尋ねた。「お兄さん?」

馬場絵里菜は表情を固くし、豊田拓海は自分より3歳年上で確かに兄だった。軽く頷いて答えた。「実の兄じゃないの」

そうとしか言えなかった。さもなければ、豊田拓海のことを夏目沙耶香にどう紹介すればいいのか分からなかった。

夏目沙耶香はそれを聞いて、豊田拓海に笑顔で挨拶した。「お兄さん、こんにちは」

豊田拓海は自然な様子で、穏やかな表情で夏目沙耶香に頷いた。特に何も言わずにまたキッチンに戻っていった。

「適当に座って」馬場絵里菜は言いながら、テーブルに行って水を注いだ。

夏目沙耶香はソファに座り、つい馬場絵里菜の家の中を見回してしまった。

家全体の広さは自分の部屋よりも小さいかもしれないが、とても清潔で、物が整然と片付けられており、必要な家電も揃っていた。