第202話:村に入る

放課後、夏目沙耶香と馬場絵里菜は一緒に足立区行きのバスに乗った。

バスに乗るなり、夏目沙耶香は大きな目を見開いて、あちこち見回し、珍しそうな表情を浮かべた。

馬場絵里菜はその様子を見て、苦笑いしながら小声で尋ねた。「乗ったことないの?」

夏目沙耶香は興奮した様子で頷いた。

夏目グループのお嬢様は、外出時はいつも専用車で、家のガレージには高級車が並び、バスなど乗るはずもなかった。

バスどころか、タクシーにさえ夏目沙耶香が乗った回数は片手で数えられるほどだった。

バスは停留所で止まっては進み、夏目沙耶香は面白く感じていた。この方向は自宅とは正反対で、乗車時間が半分を過ぎると、建物は徐々に古くなり、通りは狭くなっていった。

世田谷区に入るとすぐ、夏目沙耶香は我慢できずに言った。「世田谷区ってこんなに荒れているのね。」