細田繁の新居は世田谷区の南に位置し、かなり辺鄙な場所にあった。しかし、新しい団地で、内装も高級仕様で、八十数平方メートルがたった十二万円というとても安い価格だった。
今、東京は急速に発展しており、最も貧しい足立区でさえも再開発計画に組み込まれている。細田繁の家がどんなに辺鄙な場所にあっても、数年後には価値が数倍になるだろう。
細田繁が教えてくれた住所に従って、一行はすぐにマンションの下に到着した。
新しい団地なので入居率はまだ低く、三階の一室だけが明るく照らされており、賑やかな笑い声が漏れ聞こえてきた。
一同が階段を上がると、ドアを開けたのは細田家の長男、細田仲男の妻、伊藤春だった。
「お義姉さん!」
顔を合わせるなり、細田登美子たちは伊藤春に熱心に挨拶をした。