第228話:生まれながらの役者

新田愛美と山田吉は、両方ともサイドラインの椅子に座って休んでいて、今は二人とも目を離さずに舞台上の夏目沙耶香を見つめていた。

「この子、なかなか上手いね」と新田愛美のアシスタントの木下章が横で思わず感嘆の声を上げた。

新田愛美も心の中で驚いていた。この少女はまだ十四、五歳くらいなのに、最初のシーンで求められる強い演技力を、まるで朝飯前のように見事にこなしてしまった。本当に並々ならぬものだ。

少し力が入りすぎている感はあったものの、このような感情の起伏が激しいシーンは、全力を尽くしてこそ、あの絶望感が出るものだ。

「彼女の名前は?」新田愛美は思わず尋ねた。

新しい劇団のキャストの名前は全てアシスタントが覚えているので、木下章は即座に答えた。「女三号の夏目沙耶香です。細田監督が直々に指名したそうで、オーディションもなしで決まったと聞いています。」

新田愛美は納得した。芸能界で新人を選ぶ際には二つの基準がある。

一つは実力派、もう一つは天性派だ。

実力派は文字通り、俳優なら演技力、歌手なら歌唱力というように、それぞれの分野で確かな実力が求められる。

一方、天性派は完全に雰囲気とルックスで勝負する。人々が一目見ただけでスターだと感じられる存在だ。

細田鳴一監督がオーディションなしで女三号を決めたのは、きっと彼女の外見が生まれながらのスター性を感じさせたからだろう。だが、天性派だと思っていた彼女が、実は天性と実力を兼ね備えていたとは。

思いがけない幸運だった!

細田鳴一監督の目も輝いていた。まるで宝物を見つけたかのような光を湛えて、この夏目会長の娘は、まさに生まれながらの女優だと。

傍らの葉山葵も思わず口元を緩め、細田鳴一を見やって冗談めかして言った。「さすがですね」

細田鳴一監督は上機嫌で、すでに次回作で彼女を主演にすることを考え始めていた。「スター発掘マシーンの異名は伊達じゃないんだよ!」と得意げに言った。

一方、山田吉は見れば見るほど驚愕していた。

最近の若い子たちは一体どうなっているの?まだ子供のくせに、次々と私の仕事を奪いに来るなんて。

「この子は誰?」山田吉は冷たい表情でマネージャーの菅野東に尋ねた。