新田愛美と山田吉は、両方ともサイドラインの椅子に座って休んでいて、今は二人とも目を離さずに舞台上の夏目沙耶香を見つめていた。
「この子、なかなか上手いね」と新田愛美のアシスタントの木下章が横で思わず感嘆の声を上げた。
新田愛美も心の中で驚いていた。この少女はまだ十四、五歳くらいなのに、最初のシーンで求められる強い演技力を、まるで朝飯前のように見事にこなしてしまった。本当に並々ならぬものだ。
少し力が入りすぎている感はあったものの、このような感情の起伏が激しいシーンは、全力を尽くしてこそ、あの絶望感が出るものだ。
「彼女の名前は?」新田愛美は思わず尋ねた。
新しい劇団のキャストの名前は全てアシスタントが覚えているので、木下章は即座に答えた。「女三号の夏目沙耶香です。細田監督が直々に指名したそうで、オーディションもなしで決まったと聞いています。」