電話を切ると、新田愛美は窓の外を見つめ、その極めて美しい顔の下に、誰も知らない恐ろしさを秘めていた。
幼い頃から、自分が普通の人間とは違う存在だと知っていた。鏡を見るたびに、不思議と自分の両目を見つめて呆然としていた。
ある日、八歳の新田愛美は鏡の中で黒色から碧緑色に変わった瞳を見つめ、鏡の中の自分に向かって淡い微笑みを浮かべた。
恐怖も驚きもなく、それは本当の自分を見つけた時の安堵感だった。
彼女は心の中で、これこそが本当の自分だと認識していた。
十一歳の時、捨仙門の予知者である白川昼に見出され、ようやく自分が何故特別なのかを知った。彼女は捨仙十二衛の第五位、碧眼の狐の転生であり、前世の能力を受け継いでいたのだ。
十一歳の新田愛美は、すでに自由自在に瞳の色を変えることができた。
黒い瞳の時、彼女は普通の人間で、容姿は清楚で繊細、性格は狡猾で賢く、誰もが見て触れることのできる女神だった。
しかし瞳が碧緑色になると、軽い時は他人を催眠術にかけ、重い時は人の心を操り、魂を奪う、捨仙十二衛の中でも邪悪で侵すことのできない至高の言靈師となる。
ただしここ数年、新田愛美は碧い瞳を見せることは極めて少なく、誰もいない時に鏡の中で密かに愛でるだけだった。
芸能界という人を食い物にする悪質な競争環境の中でも、彼女は一度も言靈師の能力を使って自分の望むものを手に入れることはなかった。今日の成功は、全て自分の一歩一歩の努力によって得たものだった。
しかし彼女の心の奥底では、常に碧眼の狐こそが本当の自分であり、捨仙十二衛の一人だという声が響いていた。
今、門主がついに現れ、もうすぐ彼女も本当の自分に戻り、門主の側に行くことができる。
そう考えると、新田愛美の顔には憧れの眼差しが浮かび、日の光が差し込み、霜のような横顔が輝き、この世のものとは思えないほどの美しさを放っていた。
ドアの開く音で、新田愛美の思考は中断された。助手の木下章がドアを開け、「愛美さん、メイクの準備ができました」と声をかけた。
新田愛美は軽くうなずき、微笑んで「今行きます」と答えた。
……
第一現場は人で溢れかえり、少し名の知れた俳優たちも遠慮なく見学に来ていた。それは新田愛美の素顔を一目見るためだった。