今朝の第二中学校の門前は、いつものように高級車が集まっていた。
林駆、藤井空、高遠晴の三人は制服を着て、片方の肩にカバンを掛け、校門の木の下で話をしていた。
会うなり、藤井空が真っ先に口を開いた。「どうだった?二人とも。休みを楽しみすぎて、俺に電話一本もくれなかったじゃないか」
文句のように聞こえたが、藤井空は笑いながら言っていた。
冗談だと分かっていた林駆は、すぐに応じた。「君の邪魔をする勇気なんてないよ。沙耶香が撮影現場にいるんだから、君も毎日付き添いで雑用してたんじゃないの?」
藤井空はその言葉を聞いて得意げに眉を上げ、すぐにカバンのポケットから二つの封筒を取り出した。その封筒は非常に精巧で、一目で丁寧に準備されたものだと分かった。
高遠晴は思わず「お年玉?」と口走った。
「センスないな!」藤井空は高遠晴を睨みつけてから、笑いながら言った。「兄貴が君たちのことを考えてないと思うなよ。新田愛美のサイン入り写真だ。沙耶香に頼んで、新田愛美に特別にお願いして貰ったんだ。一人一枚!」
林駆と高遠晴は驚いて固まり、我に返った林駆は驚喜の表情で「マジで?」と言った。
普段あまり表情を見せない高遠晴の目にも、喜びの色が浮かんでいた。
藤井空は得意げに顎を上げた。「当たり前だろ!この数日間、俺は毎日沙耶香と一緒に撮影現場にいて、一日に何回も新田愛美に会えたんだ。それに知ってるか?新田愛美の事務所が沙耶香に目を付けて、契約したがってるんだ。細田鳴一監督の会社も彼女と契約したがってる」
「沙耶香、すごいじゃん!」林駆は笑いながら言い、友人のことを心から喜んでいた。
高遠晴は封筒を受け取って開けると、確かに新田愛美の直筆サイン入り写真が入っていて、しかも特別に「TO 高遠晴」と書かれていた。藤井空は本当に心を込めて準備したのだった。
サイン入り写真を大切にしまいながら、高遠晴は珍しく藤井空に「ありがとう」と言った。
藤井空はニヤッと笑い、小麦色の肌の下から真っ白な歯を見せた。「親友なんだから、そんな気を使うなよ」
みんなが話している時、一台のベンツがゆっくりと路肩に停まり、ドアが開くと夏目沙耶香が降りてきた。
みんなを見かけた夏目沙耶香は思わず驚いて「みんな、ここで何してるの?」と聞いた。