第287話:私は携帯を持っている

上級生の数人の有名人たちが校門の前で笑い合い、それは朝の美しい風景となり、通りがかりの生徒たちは皆、振り返って見ていた。

しかし、彼ら4人は隙間のない卵のようで、彼らの仲間に入るどころか、近づくことさえ不可能なことだった。

だが今では高校1年生の生徒たちは皆知っている。かつての4人組は今や6人組となり、以前は皆に足立区の貧民街の女の子として笑われていた馬場絵里菜と高橋桃が、不思議なことに彼らの仲間に加わり、その関係はますます良好になっていることを。

人々はこの突然の出来事に戸惑い、その詳細は全く分からず、馬場絵里菜と高橋桃に対して、羨ましく思うべきか妬むべきか分からない状態だった。

馬場絵里菜と高橋桃は校門に着くと、数人が笑っているのを見て、思わず互いに不思議そうな顔を見合わせた。

二人が近づくと、藤井空はすぐに馬場絵里菜を見つけ、急いで林駆の肩を突いて笑いながら言った。「見てみろ、誰が来たぞ。」

林駆はそれを聞いて顔を上げ、馬場絵里菜を見ると、瞳が輝いた。「絵里菜。」

馬場絵里菜は普段通りの表情で、皆に挨拶をし、夏目沙耶香が先ほど言ったのと同じ言葉を口にした。「みんな、ここで何してるの?」

「たまたま会って、ちょっと話してただけよ。」夏目沙耶香が言い、そして何かを思いついたように突然馬場絵里菜に向かって言った。「ねぇ絵里菜、林駆が話があるって言ってたから、私たち先に行くわ。二人で話して。」

そう言うと、藤井空と高遠晴に目配せをし、皆は意を汲んで、笑いながら学校の中へ入っていった。夏目沙耶香は馬場絵里菜の横を通り過ぎる際、呆然とする高橋桃も一緒に連れて行った。

皆が去り、木の下には馬場絵里菜と林駆の二人だけが残された。

林駆は我に返り、苦笑いしながら説明を始めた。「沙耶香が勝手にそう言っただけだよ。気にしないで。」

馬場絵里菜は理解したように、軽く頷いた。「分かってるわ。私たちも中に入りましょう。」

二人とも気まずさは感じていなかった。この友人たちのことをよく知っていて、彼らが二人きりになれる機会を作ろうとしていることは分かっていた。