第299章:お仕置き

その時の馬場絵里菜は、表情こそ変わらなかったものの、彼女から漂う威圧感は人を圧倒するほどだった。

これは彼女たちの年齢の子供が持つべき雰囲気ではなかった。

背の高い先輩の金谷希は、その様子を見て心臓が一拍飛び、思わず目を逸らし、大人しく口を閉ざした。

自分でも何がどうしたのか分からなかったが、馬場絵里菜の無表情な顔を見た瞬間、怖気づいてしまった。

背の低い方の先輩、田中奈々は、殴られた衝撃からようやく我に返り、馬場絵里菜を火を吐くような目で睨みつけ、口を開いた。「あんたって本当に淫ら...」

「パン!」

言葉が終わる前に、馬場絵里菜は再び平手打ちを食らわせた。

「何だって?」馬場絵里菜の声は淡々としていたが、極めて強い威圧感を帯びていた。

言葉を言い終える前に二度も平手打ちを食らい、田中奈々は頬が火照るような痛みを感じた。

第二中学校の女子生徒の多くは甘やかされて育ったが、田中奈々は特にそうだった。父親は建材業を営んでおり、幼い頃から贅沢な暮らしをし、両親に大切に育てられてきた。平手打ちなど食らったことがなかった。

それも二回も!

廊下は人の往来が多く、馬場絵里菜の行動は多くの人の目に留まった。

以前の馬場絵里菜は第二中学校の目立たない存在だったが、今や学校の注目の的となっていた!多くの人が興味本位で集まってきて、何が起きたのかも分からないうちに、馬場絵里菜が相手を平手打ちする場面を目撃した!

この時、田中奈々は恥ずかしさと怒りが入り混じった状態だった。今の状況が信じられなかった!

後輩に殴られ、しかもこんなに大勢の人に見られて!

理性は瞬時に崩壊し、馬場絵里菜が何を言ったかなど気にもせず、手を上げて馬場絵里菜の髪を掴もうとした。

しかし、手が届く前に馬場絵里菜に空中で掴まれてしまった。

周りの人々が反応する間もなく、廊下にまた鮮やかな「パン!」という音が響いた。

また一発の平手打ち!

田中奈々は完全に呆然となり、頭の中が轟音で満ちて何も考えられなくなった!

なぜ?

なぜ自分だけが殴られるの?

不公平だ、金谷希だって悪口を言ったのに!

見物人たちは一様に目を丸くして呆然としていた。何が起きたのかは分からなくても、昼間から広まっている噂と関係があるのだろうと推測できた。