第313章:この記憶力

夜、馬場絵里菜は部屋で宿題をしていると、傍らの携帯電話が突然鳴った。

何気なく電話に出た絵里菜は、目を本から離さなかった。

「社長!」電話の向こうから白川昼の声が聞こえた。Mグループが設立されて以来、絵里菜は彼に呼び方を変えさせた。門主という言葉と比べると、社長の方が耳に馴染む。前世の絵里菜はその二文字を長い間聞いてきたのだから。

「うん、何?」絵里菜は適当に返事をした。

「カラー鋼板ガラスの件は、すでにクースのサプライヤーと打ち合わせを済ませました。図面も完成していて、あとは施工業者と建材業者だけです。」白川昼は言いながら一旦言葉を切り、続けた。「以前、施工業者と建材業者の件は手配すると仰っていましたが、いつ頃決まりそうでしょうか?工事を早く始められるように。」