二人は通りの角にある質素な小さな食堂にやってきた。以前の細田登美子の朝食店の向かい側だった。
ちょうど食事時で、食堂は小さいながらも客が多かった。
馬場絵里菜と隼人は空いている席を見つけて座った。隣の壁には赤い壁紙が貼られ、メニューと価格が表示されていた。
女将は絵里菜を知っていて、手が空くと自ら二人のテーブルに近づいてきた。「絵里菜ちゃん!」
「田中おばさん!」絵里菜は女将を見て、すぐに笑顔で挨拶した。
「何を食べる?」
絵里菜は魚香肉絲と卵とトマトの炒め物、ご飯二杯を注文し、隼人にはソーダも頼んだ。
女将は余計なことは聞かず、他のお客の対応もあったので、絵里菜の注文を取ると立ち去った。
絵里菜はようやく隼人に向かって尋ねた。「どうしたの?何か悩み事があるみたいだけど。」