第320章:隼人の恋文

「どうですか、豊田おじさん?」馬場絵里菜は豊田剛を見つめながら言った。「このような複雑な工事を、センチュリーグループの工事チームが請け負えるかどうか、気になります」

豊田剛はその言葉を聞いて、しばらく考え込んだ。

「絵里菜さん、すぐにでも肯定的な返事をしたいところですが、これは軽い話ではありません。当社の工事チームは経験豊富ですが、これほど複雑な構造で、これほど精巧な設計の工事は扱ったことがありません。ですので、この協力を引き受けられるかどうか、一日の時間をいただきたいと思います。明日、工事部と詳しく話し合って、彼らに自信があれば、この協力を進めたいと思いますが、いかがでしょうか?」

豊田剛がすぐに承諾しなかったのは、この時点で完全な確信が持てなかったからだ。

しかし、これが貴重な機会であることも分かっていた。Mホテルが完成すれば、必ず大きな話題を呼ぶだろう。もし自社がこのプロジェクトに参加できれば、名声と利益を得る絶好の機会となり、会社にとって間違いなく有利なものとなるだろう。

豊田剛は馬場絵里菜の好意も感じ取っていた。このような工事なら、公開入札にすれば、必ず無数の建材業者や工事チームが競争しようとするはずだ。しかし、馬場絵里菜はそうせずに、直接彼を訪ねてきたのだ。

馬場絵里菜のこの厚意に対して、豊田剛は裏切るわけにはいかないと深く理解していた。十分な確信がなければ、この仕事を引き受けることはできない!

馬場絵里菜は豊田剛の懸念と慎重な態度を理解していた。彼女は快く頷いて言った。「今日は、このプロジェクトの8人の中核メンバーを連れてきました。プロジェクトの詳細について話し合いたかったのですが、豊田おじさんに懸念があるなら、明日の午前9時に、白川昼が彼らを連れて来ます。その時に豊田おじさんが工事部の方々を集めて、みんなで話し合って結論を出しましょう!」

「はい、明日の午前9時に、お待ちしています」豊田剛は頷いて承諾した。

センチュリーグループを出て、馬場絵里菜は路端に立ち止まり、白川昼の方を向いて言った。「明日は学校があるから、来られないわ。すべてあなたに任せるから、会議の結果はすぐに私に知らせて」

白川昼は恭しく頷いて答えた。「はい、社長!」