馬場絵里菜がセンチュリーグループとの提携を選んだ最も重要な理由は、実は豊田剛の人柄を見込んでいたからだった。
絵里菜が言うように、豊田剛とは二度しか会っていないが、実際、初めて会った時の彼の行動が彼女に良い印象を残した。ビジネスマンは利益を第一に考えるものだが、豊田剛は彼女が井上を救ったことがきっかけで、約1000万円のマンションを半額で彼女に売った。数百万円は数百億円の資産を持つ豊田剛にとっては微々たるものかもしれないが、彼の数百億円の資産も一つ一つの数百万円から積み重ねられたものだ。
ビジネスマンの目には、金額の大小に関係なく、お金はすべて自分のポケットに入れたいものなのだ。
豊田剛の言葉を聞いて、絵里菜は穏やかな笑みを浮かべ、そしてプロジェクト責任者の佐藤裕に目配せをした。佐藤裕はすぐさま手元のプロジェクト図面を前に差し出した。