センチュリーグループとの協力が実現した後、プロジェクト責任者の佐藤裕は一晩中プロジェクト契約書を作成し、両社は2日後に早々と契約を締結した。
これにより、東海不動産の最初のプロジェクトが正式に始動し、初期準備段階に入った。
馬場絵里菜は胸の重荷が下り、ここ数日はむしろ気が楽になっていた。週末になって、豊田拓海が部屋を借りて引っ越すことになった。
当時、馬場絵里菜の家に来た時、豊田拓海は身一つで来て、今去る時も、バックパック一つが増えただけだった。
馬場絵里菜は彼と一緒に港区に行き、豊田拓海は港区の中心部近くの小さなアパートを借りた。
「部屋は沙耶香が人に頼んで探してもらったんだ。本当は世田谷区に住もうと思ってたんだ、家賃も安いし。でも沙耶香が港区に住むように言い張って、便利だって。考えてみたらそうだなと思って、同意したんだ」
道中、豊田拓海が何気なく話した。
この数日間の付き合いで、馬場絵里菜は豊田拓海のことを多少理解するようになった。今では月給が一万円を超えており、これは会社の中堅幹部の給料とほぼ同等だが、倹約家の性格は幼い頃からのもので、節約できるところは節約するタイプだった。
しかし、沙耶香の言うことも間違いではなく、港区に住むのは確かに便利だった。
「私の新しい家も港区に買ったの。これで近くに住めるわね」と馬場絵里菜は笑顔で答え、すぐに世田谷区のスターライトバーのことを思い出して付け加えた。「それに、あなたが世田谷区に住んでいたら、田中勇に会ってしまうかもしれないでしょう。もし彼があなたに嫌がらせをしてきたら困るわ」
馬場絵里菜が言わなければ、豊田拓海はこのことをすっかり忘れていたところだった。それを聞いて何度もうなずいた。「そうだね、それを見落としていたよ」
その田中勇は結局のところ世田谷区の地元のボスで、自分が彼を怒らせて仕事を放り出して逃げたのだから、もし本当に会ってしまったら、きっと簡単には許してくれないだろう。
車は高層マンションの門前で止まり、二人は車を降りた。馬場絵里菜は何気なく周りを見回した。
マンションの造りは良く、ここ数年の新しい物件だとすぐにわかった。港区の中心部に隣接し、周辺には必要な施設が揃っており、確かに良い場所だった。