第339章:驚かされた

「社長、おはようございます!」

「社長、おはようございます!」

「社長、おはようございます!」

……

挨拶の声が次々と響き渡る中、馬場絵里菜は穏やかな笑みを浮かべながら頷いて応えていた。落ち着いた態度で慌てる様子もなく、まさに上位者の風格を漂わせていた。

細田芝子は絵里菜の傍らで呆然としていた。広大な東海不動産は17階のフロア全体を占めており、今日は百人以上の社員が残業していた。

社員たちはほとんどがスーツ姿で、各部署を忙しく行き来していた。絵里菜に挨拶をする時も、簡単な一言を交わすだけですぐに仕事に戻っていった。

実際に目にしなければ、細田芝子はこの光景を決して信じることができなかっただろう。男女問わず全員が絵里菜に対して恭しく、社長と呼んでいたのだ!

教養がそれほどない細田芝子でも、社長という言葉の意味は分かっていた。それは大企業のトップにしか与えられない称号なのだ。

細田芝子が我に返った時、すでに東海不動産の社長室に座っていた。

ソファーに座った細田芝子は落ち着かない様子で周りを見回した。広々として明るいオフィス、大きな床から天井までの窓からは東京の華やかな街並みが一望でき、座っている本革のソファーは柔らかく快適で、そして目の前では、馬場絵里菜が優しい笑顔で自分を見つめていた。

「ちょ…」

細田芝子が話そうとした時、突然のノックの音に驚いて声を詰まらせた。

絵里菜はその様子を見て思わず苦笑し、芝子に向かって優しく言った:「おばさん、そんなに緊張しなくていいですよ。」

細田芝子は心の中で思った。これは緊張ではなく、驚きのあまりだった!

ノックしたのは先ほどの受付で、絵里菜の指示通りにお茶を持ってきた。

その直後、工事部の責任者が書類を持って絵里菜を訪ねてきた:「社長、これはセンチュリーグループの建材確認書類です。サインをお願いします。」

絵里菜は受け取って一瞥した。普段彼女が会社にいない時は、最高権限は白川昼にあり、このような書類の最終署名は白川昼のものだった。

確認する必要はなかった。なぜなら書類が彼女の手元に届くのは最終手続きだからだ。上には工事部長のサイン、そしてプロジェクト責任者の佐藤裕のサインがあり、彼らは慎重に確認してからサインしたはずだ。