「社長、おはようございます!」
「社長、おはようございます!」
「社長、おはようございます!」
……
挨拶の声が次々と響き渡る中、馬場絵里菜は穏やかな笑みを浮かべながら頷いて応えていた。落ち着いた態度で慌てる様子もなく、まさに上位者の風格を漂わせていた。
細田芝子は絵里菜の傍らで呆然としていた。広大な東海不動産は17階のフロア全体を占めており、今日は百人以上の社員が残業していた。
社員たちはほとんどがスーツ姿で、各部署を忙しく行き来していた。絵里菜に挨拶をする時も、簡単な一言を交わすだけですぐに仕事に戻っていった。
実際に目にしなければ、細田芝子はこの光景を決して信じることができなかっただろう。男女問わず全員が絵里菜に対して恭しく、社長と呼んでいたのだ!
教養がそれほどない細田芝子でも、社長という言葉の意味は分かっていた。それは大企業のトップにしか与えられない称号なのだ。