第338章:社長様、こんにちは

「絵里菜、どこに行くの?」

細田芝子は好奇心を抑えきれず、また尋ねた。

馬場絵里菜は芝子の手を握り、ぎゅっと力を込めた。「おばさん、着いたら分かるわ」

姪が自分に対して秘密めかしているのを見て、芝子は思わず微笑み、目尻の細かい皺が浮かんだ。「もう、おばさんに対してまで秘密にするなんて」

絵里菜は笑うだけで何も言わず、ただ芝子の肩に寄り掛かった。

芝子は絵里菜の親密な仕草を感じ、目元が柔らかくなった。少し感慨深げな声で言った。「おばあちゃんとおじいちゃんは男の子を重視したけど、おばさんは女の子が好きなの。政策が厳しくなければ、きっと女の子を産んでいたわ」

女の子はいいものだ。両親の心の支えになる。

でも幸い、隼人という息子も思いやりのある子で、芝子は子育てにそれほど苦労しなかった。