細田芝子はベッドの横に座り、バッグから不動産権利証を取り出して進藤峰の横に置いた。「自分で見てみて」
進藤峰は手の動きを止め、不思議そうに尋ねた。「これは何?」
よく見てみると文字が目に入り、驚いて言った。「これは...これは不動産権利証?誰の?」
「私たちの家のよ!」細田芝子は今、どんな表情をすればいいのか分からず、ぼんやりと進藤峰を見つめながら言った。「絵里菜が会社を設立して、今日の午後に私を連れて行ったの。私に仕事も用意してくれて、この家も私たちにくれたのよ」
「ちょっと待って...」進藤峰は訳が分からない様子で細田芝子を見つめた。「何を言っているんだ...」
進藤峰が信じられないのは、この話が一度に信じられるようなものではないからだった。
絵里菜という14歳の少女が、会社を設立した?
細田芝子も自分の目で見ていなければ、決して信じられなかっただろう。
しかし、すべては事実で、今日の午後、彼女の目の前で確かに起こったのだ。
「本当なの、私も驚いたわ」細田芝子は心を落ち着かせ、できるだけ真剣な口調で話すようにした。「今日の午後...」
細田芝子はゆっくりと今日の午後に起こったことすべてを進藤峰に話した。二人で会社に行き、全員が馬場絵里菜を社長と呼び、そして絵里菜が彼女に仕事を用意してくれたこと、最後に家を見に連れて行ってくれたことなど、一連の出来事をすべて話した。
「不動産権利証も持って帰ってきたのよ。まだ信じられないの?」最後に、細田芝子は進藤峰を見つめて言った。
進藤峰は完全に呆然としていた。細田芝子が当時示した反応と同じように、口を半開きにしたまま、なかなか我に返れなかった。
港区第一中学校の近くの、120平方メートルの家で、市場価値が5000万円。絵里菜はそれを彼らにくれると言って、本当にくれたのか?
100人以上いる不動産会社で、彼女が社長?
これは...
あまりにも信じがたい!
「それと、あなたのことだけど、絵里菜が言ってたわ。運送会社での仕事はもう辞めて、彼女が新しい仕事を用意してくれるって」細田芝子は付け加えた。