豊田拓海が去ってしまったため、馬場絵里菜の朝食が一時的に宙に浮いてしまい、今日は普段より20分早く家を出て、朝食店で食事を済ませてから学校に行くことにした。
足立区の住宅街はほとんどが路地で、メインストリートですら広いとは言えず、路地の小道はさらに狭かった。
通行人は少なく、馬場絵里菜はリュックを背負って通りの角まで歩いていった。
突然、背中に違和感を覚え、馬場絵里菜は猫のように鋭く目を細めたが、足を止めることはなかった。
その感覚は強くなったり弱くなったり、現れては消えたりして、常に一定の距離を保っているようだったが、脅威は感じられなかった。
誰かが付いてきているが、危険はないようだ。
馬場絵里菜は不審に思い、足を止めて急に振り返った。
後ろの路地は空っぽで、人影一つ見えなかった。しかし馬場絵里菜は確信していた。その人物は必ずどこかに隠れているはずだと。