たった一言で、クラスの女子たちの女性ホルモンが一気に刺激された。
「声がすごくいい!」
「名前もすてき!」
「雰囲気が独特で、心臓が飛び出しそう」
「目が深くて、見つめられないわ!」
女子たちは興奮しながらも、声が大きくならないように気をつけ、教室にはひそひそと話す声が響いた。
ただ馬場絵里菜だけは、月島涼の視線を感じた時、臆することなく顔を上げて視線を合わせた。しかし月島涼は軽く一瞥しただけで、自然に視線を外した。
馬場絵里菜は眉間を微かにしかめた。月島涼という少年は自分と同じくらいの年齢に見えたが、彼の全体的な雰囲気は足立区の人間とは全く違っていた。
そして今朝、後ろからの気配は無害に感じられたものの、馬場絵里菜は今、警戒せざるを得なかった。この少年が自分を追ってきた目的が他にあるのかもしれないと思ったが、それは分からなかった。