第357章：面目を失う

しかし、細田繁と鈴木夕は細田仲男が深刻な表情で現れると思っていたが、実際はまったく逆だった。

「お父さん、お母さん、ただいま！」

庭から細田仲男の声が聞こえてきた。その声には喜びが隠しきれず、まるで午前中に離婚した人が彼ではないかのようだった。

キッチンのドアは庭に面していて、細田お婆さんは声を聞くとすぐに手にしていた菜箸を置き、エプロンで手を拭きながら急いで外に出た。

「仲男が帰ってきたわ！」

お婆さんは応えながらキッチンを出たが、細田仲男を見た瞬間、顔の笑みは凍りついた。

細田仲男の隣には、若くて可愛らしい女性が親しげに彼の腕に寄り添っていた。女性は美しく、化粧も非常に丁寧で、ファッショナブルな服装をしており、おしゃれな人だということが一目で分かった。

他でもない、細田仲男の結婚生活に割り込んだ第三者、中山玲奈だった。

「おばさま、こんにちは。私は玲奈です。」

お婆さんの急変した表情に対して、中山玲奈は落ち着いていて、笑顔を満面に浮かべながらお婆さんにお辞儀をして挨拶した。

鈴木夕もキッチンから出てきた。「お兄さん、お帰りなさい！」

お婆さんと比べて、鈴木夕は中山玲奈を見たときにちょっと驚いただけで、表情にはあまり変化がなかった。ただ、中山玲奈が細田仲男の腕に寄り添っているのを見たとき、心の中の疑問が一気に晴れた。

なるほど、婚姻中の不倫か。これはまさにお兄さんらしいことだわ。

でも、これは傲慢すぎる。午前中に離婚したばかりで、午後には新しい恋人を家に連れてくるなんて。恥ずかしさも感じないのか、不倫したことを人に知られたくないのか？

まさに目を見張るような行為だ。

鈴木夕は心の中で細田仲男を軽蔑したが、表面には少しも表さなかった。結局、これからもお兄さんの助けが必要な場面が多いのだから。

お婆さんは我に返ったが、自分の表情をどうコントロールすればいいか分からず、ただ手を振って言った。「中に入りなさい。私はまだ料理を作っているところだから。」

そう言って、キッチンに戻った。

結局のところ、細田仲男に対して怒りを感じていた。

息子が離婚したのは事実だし、不倫のことも知っていたが、こんなに早く相手を連れてくるなんて道理がない。