そして今、馬場絵里菜の家からわずか1キロメートルの距離にある細田家でも、同じように賑やかだった。
今日は二人の息子が帰ってきて食事をするので、細田お婆さんは息子たちの好きな料理をたくさん作り、鈴木夕も台所で手伝っていた。
「えっ?お兄さんと義姉さんが離婚したの?」
細田お婆さんが料理を作りながら、鈴木夕に細田仲男と伊藤春の離婚のことを話すと、夕は大変驚いた。
彼女は手に持っていたインゲンを見つめながら、お婆さんに目を瞬かせ、信じられない様子で「お母さん、どうしてこんなに突然なの?」
つい先日、繁と一緒に兄の家に行ったときは、兄夫婦は何も問題なさそうだったのに、一ヶ月も経たないうちに、どうして突然離婚することになったのだろう?
細田お婆さんはあまり動揺していなかった。結局、会社は息子に残り、梓時も細田家に残ることになったのだから。
ただし、彼女は息子を責めることはなく、仲男の不倫については一切触れず、ただ淡々と「もう一緒に暮らせなくなったから離婚したのよ。長年一緒にいて、お互いに飽きたんでしょうね」と言った。
鈴木夕はそれを聞いて、口には出さなかったものの、心の中でお婆さんの言葉に納得できなかった。
細田家に嫁いでまだ一ヶ月しか経っていないが、知るべきことは既に全て知っていた。伊藤春とは何度も会ったことがあり、夕の目には、春は性格が良く家庭的な人で、簡単には離婚に同意するような人ではなかった。
しかも二人とも四十歳近くで、十代の子供が二人もいて、さらにあれほど大きな会社もある。簡単に離婚するはずがない。
だから、お婆さんが曖昧な言い方をしていても、夕には兄が何か許されないことをしたに違いないと推測できた。
細田お婆さんが細田仲男を偏愛しているのは、細田家の人なら誰もが知っていることだった。だから鈴木夕は心の中ではわかっていても、余計なことは言わず、ただ探るように「お母さん、じゃあ会社はどうするの?離婚したら財産分与しないといけないんじゃない?」と尋ねた。
細田お婆さんはすぐに冷ややかに笑い、軽蔑したような態度で「会社はお兄さんのものだから、当然お兄さんのものよ!でも、お兄さんは冷たい人じゃないから、義姉さんに別荘と車を一台、それに二百万円も渡したのよ。十分な配慮をしたってことよ!」