第368章:彼女は会計士の面接に来たのよ!

馬場絵里菜は多くを語らず、直接立ち上がって言った。「特に問題がなければ、伯母さん、電話番号を残してください。会社はまだ正式に運営を開始していないので、採用面接が終わってから、すべての準備が整ってから出勤できます。その時は人事部から連絡があります」

伊藤春は馬場絵里菜を見て、また馬場輝と白川昼を見て、一時的に何を言えばいいのか分からなくなった。

自分はすでに細田仲男と離婚していて、つまり今はもう細田家の人間ではないのに、なぜ絵里菜がこのタイミングで助けてくれるのだろう?

以前も、細田仲男との関係で、彼らと親しく付き合うことはなく、ただ時々細田仲男が細田登美子を中傷する時に助け舟を出す程度だった。

伊藤春は確かに今この仕事が必要だったが、申し訳なく感じていた。

すると、馬場絵里菜は突然伊藤春を見つめ、特に真剣な様子で言った。「伯母さんは良い人です!」

短い一言だったが、千斤の重みで、伊藤春の心に強く響いた。

彼女は呆然と馬場絵里菜を見つめ、胸に込み上げる感情を抑えきれず、唇を動かしたが、一言も出てこず、ただ目が潤んだ。

馬場絵里菜もそれ以上は何も言わず、ただ優しく微笑んで言った。「負担に思わないでください。伯母さんの能力はこのポジションに相応しいです」

「伯母さん、私はまだ用事があるので、これ以上お話しできません。電話を待っていてください。何か問題があれば私の家に来てください」と馬場絵里菜は付け加えた。

伊藤春は軽くうなずいた。絵里菜がここまで言ってくれたのだから、断る理由はなかった。意図的に助けてくれているのは明らかだった。

太陽は強く照り、風は少し温かく頬を撫でて、爽快な気分にさせた。

伊藤春は道端に立ち、振り返ってオフィスビルを見つめ、思わず長いため息をついた。

この仕事の競争がどれほど激しいかを知っていたので、マネージャーの職位は全く考えておらず、まずは会計から始めて、あとは自然の成り行きに任せようと思っていた。

まさかこんなことになるとは。面接を受けた会社が絵里菜の会社だったなんて。自分が実際に経験していなければ、伊藤春は決して信じられなかっただろう。

幸い全てが順調だった。彼女はすでに離婚の時に過去を捨てることを決めていた。今こそ、自分と娘のために生きる時だった。