第370章:彼も母親と一緒に居たかった

細田梓時の声には怒りが滲んでいた。それが細田仲男に対する怒りなのか、伊藤春に対する怒りなのか定かではなかった。

あるいは、両方かもしれない。

伊藤春は息子を心配し、思わず優しく細田梓時の頭を撫でながら言った。「どうしたの?お父さんがあなたのことを放っておくはずがないでしょう?」

細田仲男が自分にとってどれほど嫌な人間であろうと、伊藤春は彼が息子を非常に可愛がっていることを知っていた。だからこそ離婚の際、細田梓時を細田家に残すことに安心していたのだ。

しかし、たった一週間で息子が自分を訪ねてくるとは思いもよらなかった。

細田梓時は目を真っ赤にして、まるで大きな不満を抱えているかのように、うつむきながら言った。「父さんは毎日家にいないし、僕の食事も作ってくれない。いつも外食で、夜も一人きりなんだ。」