菅野將の称賛に対し、馬場絵里菜は謙虚な態度で「先生のお褒めの言葉、ありがとうございます」と答えた。
クラスメイトたちも珍しく馬場絵里菜に敬意を抱いた。彼女の成績が良いのは今に始まったことではない。毎回のテストで学年の上位5位以内に入り、前回の月例テストでは1位を取ったのだから。
しかし、このオリンピック数学コンテストは通常のテストとは違う。参加した者なら誰でも問題の難しさを知っている。それなのに馬場絵里菜は満点に近い点数を取り、学校一位になったのだ。
認めざるを得ない実力だった。
馬場依子がクラスメイトからの賞賛を十分に味わう間もなく、馬場絵里菜に注目が集まってしまった。馬場絵里菜の成績と比べると、自分の4位なんて取るに足らないものに思えた。
またも馬場絵里菜か。なぜ自分は常に彼女より劣っているのか!
内心で歯ぎしりしながら、馬場依子は馬場絵里菜に冷たく鼻を鳴らした。しかし振り向いた先には、月島涼の冷たい霜のような視線が待っていた。
馬場依子は思わず首をすくめた。その眼差しは骨まで凍りつくような冷たさで、まるで魂を見通されているかのような不気味さがあった。
あれほど格好いい顔なのに、馬場依子には全く鑑賞する気持ちにはなれなかった。月島涼の隣に座るたびに、体の半分が痺れているような感覚だった。
今まで、馬場依子はこの新しい隣席の生徒が笑顔を見せたことも、半言も言葉を交わしたこともなかった。
昼食時の食堂で、林駆は意気消沈した様子で、箸でご飯に無数の穴を開けながら、一口も食べていなかった。
このコンテストがなければ、自分と馬場絵里菜の差がこんなにも大きいとは気付かなかっただろう!
「まあまあ、落選したのはお前だけじゃないだろう。学校全体で百人以上の中から5人しか選ばれないんだから、落ちるのは当然じゃないか?」藤井空は林駆を見上げ、「気にするな」という表情で慰めた。
高遠晴も落選したが、林駆と比べるとずっと冷静だった。
藤井空の言う通り、このような競争での落選は極めて普通のことだった。
二人は密かに菅野將に自分たちの成績を聞いていた。高遠晴は67点で不合格。
林駆が最も悪く、52点だった。
馬場絵里菜や馬場依子と比べれば見るに堪えない成績だが、百人以上の応募者の中では、それほど悪くない成績だった。