白川飛鳥の声には明らかな感嘆が込められており、馬場絵里菜はそれを聞いて思わず苦笑いを浮かべた。
白川飛鳥は水雲亭の総支配人であり、つまり井上財閥の中間管理職で、細田登美子と同じ地位にいた。
白川飛鳥以外にも、水雲亭の各部門の管理職は全て井上財閥の人間だった。
現在、水雲亭はMグループの傘下にあるものの、白川飛鳥たちは井上裕人によって留め置かれ、馬場絵里菜が適任者を見つけるまで退職できない状況だった。そのため、白川飛鳥の心中は複雑だったかもしれない。結局のところ、自分は彼女の直属の上司ではないのだから。
多くを語らず、馬場絵里菜は他の場所も見学し、その後、白川飛鳥の案内で水雲亭の過去の帳簿と出納記録を大まかに確認した。
彼女は単に概要を把握したいだけで、帳簿に問題があるかどうかは実際気にしていなかった。なぜなら、これは井上財閥の帳簿であり、自分とは関係のないものだったからだ。今後の帳簿に問題が生じなければそれでよかった。