第372章:恋心

明らかに、細田萌は自分と兄が細田家の人の心の中での差を十分に理解していた。

細田梓時はそれを見て、口をとがらせたまま、もう何も言わなかった。

……

センチュリーマンションで、馬場絵里菜の家の新しく購入した家が工事中だった。

細田登美子はプロの内装会社とデザイナーを見つけ、確かに多くの手間が省けたが、細部の事項については現場で監督する必要があった。

結局は自分で買った家なので、細田登美子は内装に関して完璧を求め、些細なミスも出したくなかった。

「この家、随分広いじゃないか!」

古谷隆明は初めて来て、入った瞬間に家の広さに驚嘆した。

二百平方メートル以上の建築面積に、おまけの四つのバルコニーもあり、上下二階建てで、空間はかなりゆとりがあった。

細田登美子は言葉を聞いて言った:「子供たちも大きくなって、それぞれ独立したプライベート空間が必要だし、それに家を買った日のことも話したでしょう?こんないい家が三千万円ちょっとで、全然高くないわ。」

古谷隆明は同意して頷いた。港区の現在の不動産価格では、センチュリーマンションのような良い立地で、二百平方メートル以上の面積なら最低でも七、八千万円はする。足立区の再開発の話が出た今、さらに大きな値上がりの余地がある。

三千万円というのは、まさに天から降ってきた大きな掘り出し物だった。

「家を買うと決めたなら、一気に広いものを買うのが正解だ。君の判断は正しかった。」と古谷隆明は言った。

細田登美子は微笑んだ。家の中では作業員が穴を開けていて、電動ドリルの音が耳障りで騒がしく、匂いもとても不快だった。

古谷隆明は細田登美子の体調を心配して、彼女を廊下に連れ出して話をした。

「中は埃っぽくて、たくさん吸い込むと体に良くないよ。」古谷隆明は心配そうな口調で言った。

細田登美子は頷いた。以前は自分の体調にほとんど注意を払わず、生活のために飲酒や徹夜は日常茶飯事だった。ただ大きな病気にかかったことがなかったので、自分の体が壊れる可能性があることに気付かなかった。

肝臓がんを経験して初めて危機意識を持つようになり、特に今は退院したばかりなので、何事も慎重にしなければならなかった。

「古谷さん、決めましたか?家を買うことは?」細田登美子は突然尋ねた。