第390話:一緒にお昼ご飯を

今日は東京高校オリンピック数学コンテストが開催され、会場は第一中学に設定された。

東京には十四の高校があり、各校から五人ずつの出場枠があり、参加者は七十人に満たず、一つの階段教室で十分収容できた。

コンテストは午前十一時半まで続き、全員が真剣に取り組んでいたため、誰も途中退出することはなかった。時間が終了すると、全員が一斉に教室から出てきた。

「姉さん!」

馬場絵里菜が教室を出たところで、聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると、隼人だった。

進藤隼人も第一中学の校内選抜で一位の成績を収め、学校代表として参加していた。今日の試験会場では、二人は遠くから目が合っただけで、まだ言葉を交わしていなかった。

「どうだった?」馬場絵里菜は微笑みながら、いつものように従弟の頬をつねった。

隼人もこのような親密な仕草に慣れているようで、特に違和感を感じることなく、ぼんやりとした表情で頷いた。「校内選抜の時より難しかったけど、まあまあかな。全部解けたよ。」

隼人はそういう素直な性格で、謙遜することを知らず、思ったことをそのまま口にする。

この性格は良く言えば純粋だが、実際は情緒知能が低いということだ。

馬場絵里菜は彼のことをよく理解していたので、彼がそう言うなら自信があるのだと分かった。

「学校に戻るの?」隼人は馬場絵里菜に尋ねた。

馬場絵里菜はその言葉を聞いて、思わず周りを見回した。他校からの参加者たちは既に次々と帰っていた。午後には第二中学校でも授業があるので、当然戻らなければならない。

そこで頷いて答えた。「午後も授業があるからね。」

「じゃあ、昼ご飯一緒に食べない?」進藤隼人が誘いかけた。

馬場絵里菜は時計を見た。ちょうどお昼時で、一人で食べるくらいなら隼人と一緒に食べた方がいいと思った。

「いいわよ。学校の近くを歩いて、何か食べるものを探しましょう。」馬場絵里菜は言った。

「進藤隼人!」二人が歩き出そうとした時、突然後ろから女性の声が聞こえた。

進藤隼人はその声を聞くと、表情に異変が走った。馬場絵里菜はそれを見逃さず、眉を上げた。

次の瞬間、第一中学の制服を着た女子生徒が隼人の前まで走ってきた。