馬場絵里菜は今回の目的がはっきりしていた。有名企業が残した事業なので、システムは間違いなく完璧だろう。適切な引き継ぎ手があれば、すぐに利益を生み出す可能性が高い。
わずか数ヶ月で、馬場絵里菜は東海不動産とローズエンターテインメントを設立し、水雲亭は予想外の収穫だった。
しかし現在、マカオで勝ち取ったお金以外、東海不動産とローズエンターテインメントは初期投資段階にあり、現在会社に利益をもたらしているのは水雲亭だけだった。
これはMグループの発展にとって全く不十分だったため、馬場絵里菜は実業を拡大し、発展型企業への投資を一時停止して、確実に利益を生み出せる事業を必要としていた。
「絵里菜!」
車から降りたばかりの馬場絵里菜は、呼び止められた。
立ち止まって見上げると、豊田剛だった!
「豊田おじさん!」馬場絵里菜は笑顔を浮かべて挨拶した。「あなたも来られたんですね。」
豊田剛は秘書を2人連れており、笑顔で頷いた。「運試しに来たんだ。興味のある商売があれば、手に入れようと思って。」
「私も同じです!」馬場絵里菜は笑った。
数人が雑談しながら中に入っていくと、正面の入り口で友人と談笑している馬場長生とばったり出会った。
「馬場会長!」
豊田剛は馬場長生を見て笑顔を見せ、積極的に挨拶した。
両社はライバル関係にあるものの、普段の対面では友好的な態度を示していた。
「豊田社長!」馬場長生も同様だったが、話しながら、目は既に豊田剛の隣にいる馬場絵里菜に向けられていた。
目の奥に何かが閃いたが、馬場長生は視線を戻し、馬場絵里菜には話しかけなかった。
馬場絵里菜は気にせず、むしろ気楽に感じていた。おそらく馬場依子から受けた先入観のせいで、彼女は馬場依子の父親に対しても好感を持てなかった。二人は一言も交わしたことがなかったが、馬場絵里菜は自分の直感を信じるタイプで、なぜか馬場長生という人物が好きになれなかった。
豊田剛と比べると、はるかに及ばなかった。
「豊田おじさん、私と白川昼は先に入りますね。外は暑いので。」馬場絵里菜は豊田剛に言った。
豊田剛は笑顔で頷き、馬場絵里菜は彼と馬場長生を会話に任せ、白川昼と共に会場に入った。