放課後、馬場絵里菜たちは一緒に校門を出た。
「沙耶香、今日は撮影現場に行かないの?」高橋桃は夏目沙耶香の腕を組みながら尋ねた。
夏目沙耶香は笑顔で頷いた。「今日は完成した映像の審査があって、鳴一監督が京都に行ったから、撮影現場は一日休みなの。」
そう言いながら、夏目沙耶香は眉を上げて林駆の方を見て、尋ねた。「林駆、今日は皆に何を奢ってくれるの?めったにこんなに揃わないのに!」
今日の集まりは急に決まったことだったので、林駆も事前に計画を立てていなかった。聞かれて、ただ女子たちを見て「何が食べたい?」と聞き返した。
夏目沙耶香と高橋桃はそれを聞いて、思わず馬場絵里菜の方を見た。
林駆の気持ちは彼女たちにはお見通しだった。これは馬場絵里菜に何が食べたいか聞いているようなものだった。
馬場絵里菜は瞬きをして、「辛いものが食べたいな」と言った。
「辛いもの!」夏目沙耶香はそれを繰り返した。
林駆は頷いて、少し考えてから「じゃあ、湘南亭はどう?」と提案した。
湘南亭は東京でとても有名な高級私房料理店で、龍国の湘川料理を看板メニューとしていた。
皆辛いものが平気な人たちだったので、それぞれ頷いて、林駆の車に乗り込んで、湘南亭へと向かった。
……
湘南亭は少し高級な私房レストランで、辛い味付けがメインではあるが、普通の龍国の川湘料理とは一味違う料理を提供していた。
レストランはプライバシーが十分に確保されており、全て個室形式で、テーブル席は設けられていなかった。
二階奥の個室のドア上部の木製プレートには、個室名「翠江亭」が刻まれていた。
個室の中で、白川昼は目を閉じて座り、落ち着いた様子を見せていた。傍らの山本陽介も退屈そうな様子で、手持ち無沙汰にテーブルの上のナプキンを折っていた。
目の前のテーブルは何も置かれておらず、二人とも黙っていて、誰かを待っているようだった。
しばらくして、ついに個室のドアが開き、白川昼は音を聞いて目を開けた……
大きなサンバイザーと顔の半分を隠すサングラスで、来訪者の外見は完全に隠されていた。服装も特に普通で、カジュアルなジャケットに薄いデニムを合わせただけだった。
外出する時にこんなに自分を隠す人といえば、新田愛美以外にいるだろうか?
「あら、白川昼!」