「ローズエンターテインメント?」
細田芝子は聞いて、驚きの表情を浮かべた。
お義姉さんがどうしてここで働くようになったの?お兄さんの会社で働いていたはずじゃない?
明らかに、細田芝子は今まで細田仲男が離婚したことを知らなかった。彼女だけでなく、細田登美子も知らなかった。
馬場絵里菜はそのことを思い出さなかったので、彼らに話していなかった。
「お義姉さん……これは……」細田芝子は状況が飲み込めず、一時的に理解できなかった。
細田芝子のこの反応を見て、伊藤春は彼女が自分と細田仲男の離婚のことをまだ知らないのだろうと察した。
「絵里菜が……あなたたちに話してない?」伊藤春は探るように尋ねた。
細田芝子はますます混乱し、首を振った。「いいえ!お義姉さん、何があったんですか?」
なぜか、細田芝子は心臓の鼓動が速くなり、緊張し始めた。
伊藤春も隠さず、ただ落ち着いて言った。「私とお兄さんは……離婚したの。」
「えっ?」細田芝子は驚き、意外そうな表情を浮かべた。
離婚?こんな大きなことがどうして何の動きもなかったの?
伊藤春は頷き、落ち着いた様子で言った。「もう一ヶ月近くになるわ。」
細田芝子はしばらく言葉を失い、明らかに衝撃を受けていた。
お兄さん家は一番裕福で、お義姉さんも良い人なのに、まさかお兄さんとお義姉さんが離婚するとは思いもしなかった。
伊藤春は馬場絵里菜が彼女に仕事を手配してくれたことも一気に細田芝子に話したが、それは細田芝子をさらに驚かせ、言葉を失わせた。
19階のローズエンターテインメントも、絵里菜のものだったの?
同様に、伊藤春も17階の東海不動産株式会社が馬場絵里菜のものだと知った。
「この絵里菜って……」伊藤春は口を開いたが、何を言えばいいのか分からなかった。
彼女たち二人は、細田芝子が東海不動産の経理部で出納係として、伊藤春はローズエンターテインメントの経理部でマネージャーとして働いており、二人とも馬場絵里菜の会社に入り、どちらも馬場絵里菜が手配したものだった。
二人は話しながら、会社のビルに入った。
伊藤春は細田仲男との一件を全て細田芝子に話した。細田仲男の不倫のことも含めて。
結局、細田芝子は子供ではないので、子供には言えないことでも、細田芝子には隠す必要はなかった。