第413話:奇妙な人物が再び動く

皆は最初驚き、そして思わず目を見開いた。

その人物は黒い服装に身を包み、肩までの長さの柔らかな層状の髪。前髪の下から覗く一双の目は氷のように冷たく、骨の髄まで凍らせるようだった。

全身から放たれる気迫は鋭く、人を震え上がらせるような殺気を帯びていた。

来訪者を見て、夏目沙耶香は思わず口を押さえて叫んだ。「月島涼!」

馬場絵里菜と林駆たちも、この人物が最近突然彼らのクラスに転校してきた月島涼だと気付いた。

伊藤宏の手首はとても逞しかったが、今は月島涼の白く長い指にしっかりと掴まれていた。その手は一見繊細で柔らかそうに見えたが、実際には鉄の万力のように強かった。

伊藤宏は何度か力を込めて引っ張ったが、まったく動かず、振り払うことができなかった。

「離せよ、余計な口出しするな!」伊藤宏は怒りの表情を浮かべた。周りにこれだけの同級生がいるのに、一年生の後輩に面子を潰されて、プライドが許さなかった。

月島涼は少し目を上げ、冷たい光が伊藤宏に向かって射した。

伊藤宏は瞬時に寒気を感じ、頭から足まで凍りつくような感覚に襲われた。

「彼女が嫌だと言っているだろう。人の言葉が分からないのか?」

月島涼は静かに口を開いた。その声には形のない圧迫感があり、伊藤宏だけでなく、その場にいた他の者たちも思わず足元が寒くなるのを感じた。

「お前に関係ないだろう?俺が誰だか知ってるのか、俺は...あっ...」

伊藤宏の言葉は途切れ、手首に突然心臓が引き裂かれるような痛みを感じ、思わず悲鳴を上げた。

冷や汗が一気に噴き出し、伊藤宏の顔は真っ青になり、体が自然と歪み始めた。「離せ...痛い...くそっ...」

周りの人々は恐れと心配の入り混じった表情を浮かべながらも、誰も口を開く勇気がなかった。

「謝れ!」月島涼は冷たく言い放ち、手の力をさらに強めた。

「あっ...」伊藤宏は激痛に耐えかね、全身の力が抜けたかのように、体を曲げ、今にも地面に膝をつきそうになった。

周りの人々は見ているだけで、誰も口を開く勇気がなかった。主に今の月島涼の威圧的な雰囲気があまりにも強く、自分も巻き込まれたくなかったからだ。

馬場絵里菜はその場に立ちながら、唯一ぼんやりと考え事をしていた人物だった。