皆は最初驚き、そして思わず目を見開いた。
その人物は黒い服装に身を包み、肩までの長さの柔らかな層状の髪。前髪の下から覗く一双の目は氷のように冷たく、骨の髄まで凍らせるようだった。
全身から放たれる気迫は鋭く、人を震え上がらせるような殺気を帯びていた。
来訪者を見て、夏目沙耶香は思わず口を押さえて叫んだ。「月島涼!」
馬場絵里菜と林駆たちも、この人物が最近突然彼らのクラスに転校してきた月島涼だと気付いた。
伊藤宏の手首はとても逞しかったが、今は月島涼の白く長い指にしっかりと掴まれていた。その手は一見繊細で柔らかそうに見えたが、実際には鉄の万力のように強かった。
伊藤宏は何度か力を込めて引っ張ったが、まったく動かず、振り払うことができなかった。
「離せよ、余計な口出しするな!」伊藤宏は怒りの表情を浮かべた。周りにこれだけの同級生がいるのに、一年生の後輩に面子を潰されて、プライドが許さなかった。