第412話:ナンパ?お断り!

「彼女のことを随分と心配しているようだね?」

伊藤宏は豊田東を見て口の端を歪めて笑い、眉を上げて言った。「東、お前も彼女のことが好きなのか?」

その一言に、豊田東は慌てて手を引っ込めた。「伊藤、変なことを言うなよ。そんなことないって。」

冗談じゃない。馬場絵里菜に会ったのはたった二回だけだ。好きになるわけがない。

ただ父親からの頼みがあるだけだ。

「それならいいよ!」伊藤宏は軽く笑って、豊田東の肩を叩いた。「安心して、ただ彼女と知り合いになりたいだけだよ。何もするつもりはない。」

仮に何かするつもりだとしても、この時間この場所ではありえない。

そう言いながら、伊藤宏は本当に馬場絵里菜の方へ歩き出し、他の者たちも興味深そうな表情で後に続いた。

伊藤様が気に入った女性で、手に入らなかった者はいない。これは州知事である父親のおかげだけではなく、伊藤宏自身が背が高くてイケメンで、体格も良く、多くの女子が好む運動系男子だからだ。