そう思うと、白川昼は思わず恐れおののいた表情を浮かべた。
彼は馬場絵里菜の前に素早く歩み寄り、片膝をついて言った。「私が越権行為をしてしまいました。門主様、どうかご処罰ください。」
月島涼もそれを見て、すぐに跪いた。「門主様、どうかご処罰を!」
馬場絵里菜は白川昼がこのような反応を示すことを予想していた。微笑みながら、物憂げな口調で言った。「もういいわ。あなたは良かれと思ってやったことだもの。私は怒ってないわ。」
「立ちなさい!」馬場絵里菜はそう言いながら、すでにソファに座っており、表情は穏やかで怒りの色は見えなかった。
白川昼と月島涼はその言葉を聞いて、ようやく体を起こした。白川昼は不安な気持ちで、申し訳なさそうに月島涼を見た。
月島涼は少し俯いていて、表情は見えなかった。
馬場絵里菜はその様子を見て、首を振って笑った。「もういいわ。彼を責めないで。最近、私の身の回りにトラブルが多くて、この数日で彼が何度も出手してくれたわ。私だって目が見えているんだから、疑問に思うのは当然よ。」
確かに、月島涼が単に変わった性格だったというだけなら、馬場絵里菜も深く考えなかっただろう。
彼女が月島涼を捨仙門の者だと思ったのは、彼が何度か見せた技が普通の格闘技ではなく、特殊な能力を持っていたからだ。
白川昼が言っていたように、彼自身を除いて、十二衛の各メンバーは特別な技を持っており、一般人とは比べものにならなかった。
月島涼の身のこなしは不気味で、その速さは人が消える時に黒い影を残すほどで、ほぼ光速に等しく、人の命を奪うのは一瞬の出来事だった。
影月の修羅というコードネームは、彼にぴったりだった。
白川昼は仕方なく頷いた。実際、月島涼は十分慎重に行動していた。先週末、彼が新田愛美と宮原重樹との待ち合わせを約束していた時、急用で来られなかった十二衛のメンバーが、実は月島涼だった。
理由は単純で、その日月島涼は放課後、いつものように馬場絵里菜を密かに護衛して家まで送ろうとしたが、馬場絵里菜が林駆たちと一緒に湘南亭で食事をすることになった。そして偶然にも、白川昼が山本陽介にレストランを予約させた際、山本陽介は新田愛美と宮原重樹が辛い物好きなことを知っていたため、同じく湘南亭を予約していたのだ。