第421話:私は孤児です

馬場絵里菜は暫く慎重に考えてから、軽く頷いた。

彼女が既に知っているのなら、隠す必要はない。しかも現在、捨仙十二衛の中で三人が既に彼女に会っているので、新田愛美だけを特別扱いしたくなかった。

ただし……

馬場絵里菜は言った:「もうすぐ期末試験なので、会うなら夏休みにしましょう。」

どちらにしても新田愛美は今東京で撮影中だし、急ぐ必要はない。

白川昼はそれを聞いて喜び、すぐに頷いて答えた:「はい、門主様。彼女はきっと喜ぶと思います。」

馬場絵里菜は口角を引き上げようとしたが、笑顔にはならなかった。

新田愛美、あの万人に愛される大スター女優が、捨仙門の人間だったなんて。

……

翌朝、馬場絵里菜は朝食を済ませて普段通り出かけようとすると、月島涼がカバンを背負って、門の外の木に寄りかかって待っているのが見えた。

「朝ご飯は食べた?」馬場絵里菜は近づいて尋ねた。

月島涼は相変わらず冷たい表情で、門主である馬場絵里菜に対してもそうだった。彼の敬意は心の中だけにあり、表情には全く表れない。

むしろ宮原重樹と比べても、月島涼の変わった性格の方が際立っていた。

頷いて、やっと三文字を口にした:「食べた。」

二人は並んでバス停に向かって歩き始めた。馬場絵里菜はこの感じも悪くないと思った。高橋家は世田谷区に引っ越してしまい、この頃は登下校を一人でしていたので、今こうして誰かと一緒なのも良かった。

「こうして東京に来て、ご両親は心配じゃないの?」

二人が歩いている時、馬場絵里菜は突然尋ねた。

月島涼はそれを聞いて、小さな声で答えた:「孤児です。」

馬場絵里菜は驚いて、思わず横顔を見た。月島涼の表情は淡々としていて、まるで自分とは全く関係のない事を話しているかのようだった。

彼が寡黙なのを知っていたので、これ以上話さないだろうと思ったが、意外にも月島涼は続けて言った:「六歳から放浪生活を始めて、十歳で影月の力が目覚め、その後白川昼兄さんに見つけられ、捨仙十二衛の序列で第六位の影月の修羅だと知りました。」

「それからずっと白川昼と一緒に暮らしてたの?」馬場絵里菜は更に尋ねた。

月島涼は「うん」と答えて、言った:「彼についてクース国に行き、そこで四年間暮らしました。」