東京は日本の北部に位置しているものの、六月中旬の天気はすでに暑くなっていた。
馬場輝はバイクに乗って世田谷区の自動車学校を出て、港区へと向かった。
免許を取ることは馬場絵里菜が彼のために決めたことだったが、馬場輝も考えてみると確かに取るべきだと思い、世田谷区の近くの自動車学校に申し込んだ。
生暖かい風が頬を撫でる中、馬場輝はバイクを走らせ、最後に東京の有名なケーキ店の前で停まった。
この店はシャンゼリゼという名前で、東京では非常に有名で、ケーキを注文するには二日前から予約が必要だった。そして明後日は、妹の誕生日だった。
店舗の外観は乳白色を基調とし、オレンジ色とクリーム色の装飾が控えめに施されており、清潔感があり派手すぎない印象だった。
水曜日の午後にもかかわらず、店内のカウンター前には長い列ができていたが、幸いなことにこれらの人々はパンやスイーツを買いに来ただけで、バースデーケーキは別のカウンターで選んで予約するようになっていた。
馬場輝が店内に入ったばかりの時、店の外の路肩にハマーが停車した。
「お嬢様、ここは東京で一番のケーキ店です」
運転していたのは井上家の運転手で、三十歳そこそこの体格のいい元特殊部隊の隊員だった。
井上雪絵は助手席に座り、窓からケーキ店を覗き込んで、頷いた。「なかなか良さそうね」
「波おじさん、ちょっと待っていてね、中を見てくるわ」井上雪絵はそう言うと、すぐにドアを開けて車から飛び降りた。
井上雪絵は今日もドレッドヘアに色とりどりのヘアゴムを付け、短いライダースジャケットに、タイトなレザーパンツ、スタッズ付きのブーツという出で立ちで、非常に目立つ存在だった。
そのため、彼女が現れた途端、周りの人々の注目を集めることに成功した。
東京のような発展した都市でも、井上雪絵のような格好をしている人はめったに見かけない。まだ2002年なのだから。
馬場輝は偶然井上雪絵を見かけ、一瞬呆然とした。主に彼女の派手な格好に目を引かれたのだ。井上雪絵は濃いメイクはしていなかったものの、この服装だけでも人々の視線を集めるのに十分だった。
しかも井上雪絵は背が高かったが、見た目は馬場絵里菜と同じくらいの年齢に見えた。
数秒後、馬場輝は視線を外し、心の中で呆れて首を振った。最近の若い子は、派手すぎる。
とても理解できない。