息子のそんな教えようのない様子を見て、伊藤春の目には隠しきれない失望の色が浮かんでいた。
彼女が馬場絵里菜に高価な贈り物をしたのは、まず絵里菜が彼女の就職を手伝ってくれたから、次に細田仲男と別れた後も細田登美子と本当の友人として付き合いたかったから、そして最も重要な三つ目の理由は、絵里菜があまりにも素晴らしい人だったからで、好きにならない理由がなかったからだ。
この贈り物には多くの感情が込められていた。感謝の気持ちもあれば賞賛の気持ちもあった。伊藤春はその価格を高いとは思わなかった。最も重要なのは、馬場絵里菜がそれに値する人だということだった。
息子の考え方はすぐには変えられないし、伊藤春は絵里菜が会社を設立したことを彼に話すこともできなかった。その話が最後に細田仲男の耳に入り、細田家の両親の耳に入ることを恐れたからだ。