息子のそんな教えようのない様子を見て、伊藤春の目には隠しきれない失望の色が浮かんでいた。
彼女が馬場絵里菜に高価な贈り物をしたのは、まず絵里菜が彼女の就職を手伝ってくれたから、次に細田仲男と別れた後も細田登美子と本当の友人として付き合いたかったから、そして最も重要な三つ目の理由は、絵里菜があまりにも素晴らしい人だったからで、好きにならない理由がなかったからだ。
この贈り物には多くの感情が込められていた。感謝の気持ちもあれば賞賛の気持ちもあった。伊藤春はその価格を高いとは思わなかった。最も重要なのは、馬場絵里菜がそれに値する人だということだった。
息子の考え方はすぐには変えられないし、伊藤春は絵里菜が会社を設立したことを彼に話すこともできなかった。その話が最後に細田仲男の耳に入り、細田家の両親の耳に入ることを恐れたからだ。
彼女は絵里菜のためにこの秘密を守らなければならなかった。
唯一の慰めは、少なくとも娘が物事をよく理解する子供だということだった。
車が高級住宅地に入ると、遠くから伊藤春は自宅の別荘前の道路にテールランプを点けた車が止まっているのが見えた。
細田仲男はスーツを着て暗い表情で、タバコを一服一服吸っていた。
「あれ?お父さん?」細田萌は一目で細田仲男だと分かり、声には喜びが滲んでいた。
細田梓時は一瞬固まり、目を細めて見つめた後、確かに細田仲男だと分かると冷ややかに鼻を鳴らした。「よく来れたものだな」
車がゆっくりと車庫の外に停まると、細田仲男は伊藤春の車を見て、急いでタバコの吸い殻を捨てて足早に近づいてきた。
伊藤春は先に車を降り、すぐに細田仲男を不機嫌そうに見て言った。「細田仲男、何しに来たの?」
「梓時はどこだ?お前のところにいるんだろう!」細田仲男は険しい表情で伊藤春を見つめ、開口一番詰問するような口調だった。
「はぁ……」伊藤春は怒りで逆に笑いが出て、細田仲男を怒鳴りつけた。「あなたにまだ息子がいたことを覚えていたの?半月も、あなたどこにいたの?」
「お父さん!」
そのとき、細田萌が車から降りて、細田仲男の方へ走っていった。
「萌!」細田仲男の表情が少し和らぎ、手を伸ばして細田萌を抱きしめ、慈愛に満ちた表情を見せた。「どう?お父さんに会いたかった?」