第455話:プレゼントは?早く出して!

中川文と鈴木墨は一緒に馬場絵里菜たちを武道場から見送り、別れを告げた後、黒いベンツが交差点で消えるまで見送った。

「新しい弟子が入門するのは、良い兆しだ」鈴木墨は目を輝かせ、少し興奮した様子だった。

中川文はその言葉を聞き、ただ手を伸ばして鈴木墨の柔らかい髪を撫でたが、心の中では父親の足が本当に治るのかどうかが気がかりだった。

……

車の中で、山本陽介が尋ねた。「門主、足立区に戻りますか?」

後部座席に座っていた馬場絵里菜は時計を見て、もうすぐ昼になることを確認し、「華咲ビルへ行って」と答えた。

今日、馬場絵里菜は皆をご馳走することになっていた。沙耶香と林駆たちが彼女の誕生日を祝うためだった。

華咲ビル最上階の回転レストランは馬場絵里菜が早めに予約していた場所で、今日の昼に設定していた。沙耶香は今日夜の撮影があるため、事前に馬場絵里菜に連絡を入れていたのだ。

車は港区に入り、広場を二つ過ぎたところで、東京のランドマークである華咲ビルの前に停車した。

ビルの前の駐車場には高級車が並び、光り輝く回転ドアには人々が行き交っていた。華咲ビルは元々華咲グループの本社で、2000年に最上階を東京初の地上300メートルの360度回転レストランに改装し、すぐに東京の名門たちが頻繁に利用する高級な食事処となった。

馬場絵里菜が同級生との集まりをここに予約したのは、ただ前世でここに来たことがなかったからだった。

車を降りると、助手席の月島涼が動く気配もなく座っているのを見て、馬場絵里菜は車のドアを開け、「降りないの?」と声をかけた。

月島涼は顔を上げ、冷たい表情に少しの不満を浮かべて「お腹すいてない」と言った。

馬場絵里菜は月島涼が賑やかな場所が苦手で、沙耶香たちとも共通の話題がないことを知っていた。彼はもともと群れることを好まない人だった。

しかし、彼が自分の側にいたいのなら、彼女の友人たちと接することは避けられない。

「今日は私の誕生日なの」馬場絵里菜は月島涼を見つめながら言った。

月島涼は一瞬躊躇する様子を見せたが、最後にはうなずいて、シートベルトを外して車を降りた。

山本陽介はそれを見て、思わず笑いを漏らした。月島様のあの性格は、牛でも動かせないのに、門主と主の前でだけは柔らかくなるのだから。