第454章:大師兄の文

中川彰は馬場絵里菜の視線に気づき、穏やかな口調で言った。「もう2年以上経つんだ。当時はひどい怪我で、医者からは回復の見込みはないと言われた」

傍らにいた鈴木墨は暗い表情を浮かべ、当時の状況を思い出すと、思わず拳を握りしめた。

馬場絵里菜はその詳細を追及するつもりはなかった。中川彰の反応から現実を受け入れているようだったが、それは他人の傷に触れる理由にはならなかった。

そのまま山本陽介を見上げると、その目には明らかな問いかけの色が浮かんでいた。

山本陽介は馬場絵里菜の意図を理解し、軽く笑って頷いた。

この程度の足の不自由さなら、宮原重樹様にとっては何でもないことだった。

馬場絵里菜も同じように考えていた。結局のところ、宮原重樹は母親のがんさえも治してしまったのだから。

「信じられるかどうかは別として、私はあなたの足を治すことができます」馬場絵里菜は中川彰を見つめながら、確信に満ちた声で躊躇なく言った。

中川彰は一瞬驚いた。この少女は先ほど庭で彼の足を治せると言っていたが、その時は武道場に入るための焦りから出た言葉だと思っていた。

今や彼らは合意に達し、二人は無事に武道場に入ることができた。この時点で馬場絵里菜が再びその言葉を口にしたということは、明らかに冗談ではなかった。

中川彰は表情を曇らせ、馬場絵里菜にどう反応すべきか、あるいは彼女を信じるべきかどうか迷っていた。

馬場絵里菜は、自分のような若い女の子の口から出た言葉には説得力がないことを知っていたので、急いで付け加えた。「誤解しないでください。私が治療するのではなく、別の方がいらっしゃいます」

「父さんの足が治るなら、どんな条件でも受け入れます」

中川彰が口を開く前に、正庁の入り口から力強い声が響いてきた。

全員が声のする方を見ると、体格の良い男性が正庁に足早に入ってくるのが見えた。

その男性は二十一、二歳くらいで、中川文という名前で、中川彰の一人息子であり、龍栄道場の大先輩だった。

中川文は背が高く、凛々しい眉と目を持ち、肌は浅黒く、筋肉が隆々としていた。その鉄のような男らしさは、父親の中川彰の書生のような雰囲気とは正反対だった。

「大先輩、お帰りなさい!」

鈴木墨は来訪者を見るなり、急いで迎えに行った。「私たちの道場に新しい二人の弟子が入門しました。この二人です!」