三十分後、馬場絵里菜は山本陽介の車に乗った。
しかし今回は、車内の温度が異様に低いことを明確に感じた。エアコンの冷気とは違う種類の寒さだった。
前席の宮原重樹に視線を向け、後部座席で自分と一緒に座っている月島涼を見て、馬場絵里菜は状況を理解した。
白川昼は前回、十二衛の面会を早めに設定しようとしたが、月島涼は馬場絵里菜に気付かれることを恐れて現れなかった。そのため、今日が宮原重樹と月島涼の初対面だった。
二人とも寡黙な性格で、言葉少なというだけでなく、表情も乏しかった。
馬場絵里菜は空笑いを一つ漏らし、助手席の背もたれに寄りかかって宮原重樹の横顔を見ながら言った。「具体的な状況は山本陽介から説明を受けたよね?」
宮原重樹は淡々と応えた。「ああ。」
彼は普段から他人の私事に関わることはなく、見て見ぬふりをすることも少なくなかったが、馬場絵里菜の命令に関しては従順に従っていた。