会議室。
夏目沙耶香のチームが片側に座り、マネージャーの豊田拓海の他に、男女二人のアシスタントがいた。
ローズエンターテインメントの契約部門のスタッフがもう片側に座り、両者は挨拶を交わした後、すぐに本題に入った。
会議室の隣の部屋で、馬場絵里菜たちがソファに座り、室内のセンサーを通して交渉の過程を聞いていた。
以前から長期にわたって両者が積極的にコミュニケーションを取っており、多くの異議のある部分についても非常に適切な解決策が見つかっていた。また、豊田拓海は既に細田鳴一監督の会社と新田愛美のスタジオを明確に断っており、沙耶香のマネジメント契約をローズエンターテインメントと結ぶことを決意し、後戻りできない状況を作っていたため、契約プロセス全体はほとんど障害なく進んだ。
ローズエンターテインメントも馬場絵里菜の指示のもと、沙耶香のチームに高額な収益配分と契約期間中の質の高い映像作品の出演機会を提供した。
最初のプロジェクト『交織の夜』の唯一のヒロインは沙耶香のために用意されたもので、完璧な殺人計画を実行し、世間を欺いた15歳の少女殺人者を演じる役だった。
30分後、契約は順調に完了し、両者の「よろしくお願いします」という言葉とともに、馬場絵里菜の口角も上がった。
沙耶香と契約を結び、エンターテインメント会社は初めてのタレントを獲得し、会社の本格的な船出を意味していた。
「門主、もしよければ...私も契約してください?」新田愛美が突然おずおずと前に出て話しかけた。
白川昼と宮原重樹は門主の側で仕事をしており、彼女も残りたかった。
馬場絵里菜はそれを聞いて、期待に満ちた表情の新田愛美を見上げ、最後に首を振った。「だめよ。」
新田愛美は門主がまだ自分のことを怒っているのだと思い、すぐに助けを求めるような表情で白川昼を見た。白川昼は鼻先を触りながら、気づかないふりをして顔をそむけた。
馬場絵里菜の声がタイミングよく響いた。「まだタイミングじゃないわ。もう少し待って。」
ローズエンターテインメントは設立したばかりで、最初のプロジェクトのキャスティングもまだ始まっていない。この時期に突然新田愛美と契約を結べば、他の会社から注目されることは避けられない。