第473話:ミューズ酒場

しかし今日、井上雪絵は身支度を整え、新しい服に着替えて、外出する準備をしていた。

お兄さんのことをこれ以上考え続けると、恋煩いになってしまいそうだった。

それに、ずっと家に閉じこもっていても、お兄さんが天から降ってくるわけでもない。だから井上雪絵は外に出て気分転換をしようと思った。もしかしたら、お兄さんとの縁がまだ尽きていないかもしれないし、また会えるかもしれない。

ちょうど今日、相原達也から電話があり、夜一緒に遊びに行こうと誘われ、井上雪絵は喜んで承諾した。

服を着替えて、井上雪絵は階段を駆け下りた。お爺さんはリビングでお茶を飲んでいたが、孫娘の様子を見て、すぐに立ち上がって心配そうに尋ねた。「雪絵や、こんな遅くにどこへ行くんだ?」

「お爺ちゃん、達也お兄さんと遊びに行くの」井上雪絵は言いながら、玄関で靴を履き始めた。