荷物を片付けた後、馬場絵里菜は馬場輝に電話をかけた。一時的な引っ越しのことについて、まだ兄に相談していなかったからだ。
馬場輝は妹が武道場で武術を学ぶことを知っていた。夏休みを利用して武術を学ぶのは良いことだ。将来の護身術にもなるし、体を鍛えることもできる。ただ、引っ越すことについては少し意外だった。
馬場絵里菜は北区の武道場の住所と新しい住所を馬場輝に伝え、やっと彼の心配を和らげた。
外に出て、馬場絵里菜は玄関に鍵をかけ、ふと黒い革のカバーをかけられたポルシェのスポーツカーに目が留まった。
この車はまだ返せそうにない。しばらくは運転できる人もいないし、とりあえず家に置いておくしかない。
足立区の道は元々歩きにくく、特に雨が降った後は凸凹で泥だらけになり、不注意に水たまりに踏み込んでしまう。