道場の中庭で、中川彰は中年の男性と話をしていた。
中年の男性は細田大志という名前で、細田次郎というあだ名を持っていた。名前は良くないように聞こえるかもしれないが、彼は紛れもない億万長者で、この近辺の十数軒の武道場の建物は全て細田次郎の先祖から受け継いだものだった。
この細田次郎は他に何もする必要がなく、ただどの武道場の年間賃貸契約が切れるのを待って賃料を集めに行くだけだった。他の人を雇う必要もなく、一人で簡単にこなせ、年間数千万円の家賃が全て自分のポケットに入っていた。
これはまだ不動産業界が過熱していない時期の話だ。数年後、日本の不動産が発展すれば、東京は必ず土地の価値が上がり、この一帯が再開発の対象になれば、この細田次郎の資産は一瞬で十億円を超えるだろう。