第508話:服は足りている

午前の稽古は十一時半まで続いた。

道場の弟子たちはそれぞれ異なる武術を学んでいた。

基本的な拳法と足技の他に、各自が主となる武術を一つ選んでいた!

柳澤勇気は棒術を学んでいた。

西野孝宏は九節鞭術を学んでいた。

古谷浩は短刀術を学んでいた。

平野青は軟劍を学んでいた。

そして鈴木墨は武器を使わず、詠春拳を練習していた。

馬場絵里菜と月島涼は入門したばかりなので、基礎を固めることが重要で、しばらくしてから他の武術を学ぶことができる。

そのため午前中、他の人たちは自分の専門とする武術の練習をしている中、馬場絵里菜だけが中川文の指導の下、最も基本的な訓練をしていた。

月島涼は基礎があるため、他の人たちの進度にすぐに追いつけるはずだったが、彼は馬場絵里菜に付き添うことを望み、中川彰もそれを認めた。

稽古が終わると、みんな汗びっしょりで、馬場絵里菜に至っては足元がふらつき、体力の限界に近づいていた。

女子シャワー室では、水の音が響いていた。

「師妹、どう感じた?」

シャワーブースで、平野青は馬場絵里菜に笑顔で尋ねた。

馬場絵里菜は今や腕を上げるだけでも筋肉が痛むため、強がらずに率直に言った:「死ぬほど疲れた!」

それを聞いて、平野青は思わず笑った:「一週間もすれば筋肉がこの強度の訓練に慣れてくるわ。だからこの数日間は確かに辛いでしょうね!」

馬場絵里菜は頷いた。筋肉には記憶があるので、突然強度を上げたために今のような状態になっているだけで、数日経てば慣れるはずだ。

「私たち龍栄道場の稽古は午前中だけだから、午後は自由に使えるし、ゆっくり休むこともできるわ」と平野青は付け加えた。

他の道場は昼から開館し、夕方まで稽古が続く。

しかし龍栄道場は日本の伝統的な武術の訓練方式で、早朝から午前中のみ稽古を行う。

道場で昼食を済ませた後、馬場絵里菜は月島涼と一緒に道場を出た。

しかし二人は家に帰らず、馬場絵里菜は月島涼をタクシーに乗せ、港区の帝心デパートへ直行した。

この数ヶ月間、馬場絵里菜は知らず知らずのうちに身長が伸びていることに気付いた。以前の夏服の多くが着られなくなっており、前回白川昼が買ってくれた服の大半は春秋物で、夏服は新しく買い直す必要があった。