東海不動産の財務部のオフィスでは、数人の同僚が仕事をしながら、気軽に雑談をしていた。
細田芝子は会社に来てからしばらく経っており、最初は年配の出納係が彼女を指導していたが、今では出納の仕事に完全に慣れ、一人で処理できるようになっていた。
オフィスのドアが開き、馬場絵里菜が入ってきた。
皆が反射的に顔を上げ、突然の馬場絵里菜の姿に一瞬驚いた後、我に返った。
「社長!」
従業員たちは急いで馬場絵里菜に挨拶をしたが、馬場絵里菜は笑顔で手を振り、気にせず仕事を続けるように合図した。
細田芝子のデスクに直接向かうと、芝子は小声で尋ねた。「どうしてここに?」
馬場絵里菜は微笑んで答えた。「ちょっと用事を伝えに来て、ついでにあなたに会いに来たの。」
話しながら、馬場絵里菜は何気なく財務部を見渡した。オフィスは南向きで、昼間は日当たりが良く、見晴らしも良かった。