第551章:語れない秘密があるのでは

細田仲男はこの時点で馬場絵里菜の悪口を言い続けることはできなかったが、自分の態度の変化が妹の家が金持ちになったからだとは中山玲奈に正直に言えなかった。

その場で慈愛に満ちた年長者の表情を浮かべ、中山玲奈を見つめながら言った。「絵里菜はまだ子供だからね。ずっと冷たい態度を取り続けるわけにもいかないだろう?そこまでする必要はない……」

言い終わると、その言葉に説得力がないと感じたのか、細田仲男は急いで付け加えた。「それに、彼女と一緒にいた男性が誰だか見なかったのか?」

「誰?」中山玲奈は好奇心いっぱいの表情で尋ねた。

もちろん彼女は見ていた。そして長年の男を見る目利きから、先ほど仲男の姪と一緒に食事をしていた男性は、間違いなく非常に成功した裕福な人物だと分かった。聞くまでもなく、その身なりと雰囲気からして明らかだった。

細田仲男も謎かけはせずに、はっきりと言った。「あの人はセンチュリーグループの会長なんだよ!」

「センチュリーグループ?」中山玲奈は思わず驚きの表情を見せ、濃いアイラインを引いた目を大きく見開いた。

彼女はビジネス界の人間ではなかったが、センチュリーグループについては決して無縁ではなかった。

以前、仲男が彼女のために家を買おうとした時、彼らはセンチュリーグループの物件を見に行ったが、結局高すぎると思って購入を見送った。

中山玲奈は突然思い出した。あの時、モデルルームで彼女と仲男は初めて彼の妹の家族に会ったのだ。

しかし考え直してみると、中山玲奈は少し混乱した様子で、まばたきを数回して、疑わしげな表情で尋ねた。「でも……あなたの姪がどうしてセンチュリーグループの会長と一緒に食事をしているの?」

この二人は全く接点がないはずで、次元の違う人たちじゃないの?

「さっき豊田会長が言っていただろう、絵里菜とは忘年の交わりだって」細田仲男は何気なく答えた。

中山玲奈はその言葉を聞いても気にも留めない様子で口を尖らせ、心の中で陰謀論が浮かび、さらに意味深な表情を浮かべた。「ふん、きっと何か言えない秘密があるんでしょ」

細田仲男は眉をしかめ、中山玲奈を冷ややかに見つめながら言った。「でたらめを言うな」

どう考えても、絵里菜はまだ15歳だ。そんな考えを彼女に当てはめるのは非常に不適切だった。