第555章:私は絶対に許さない

中庭を出ると、馬場長生は自分の高価なスーツのことなど気にもせず、外の人混みを強引に素早くかき分けて進んだ。

目を上げると、馬場輝の姿はすでに遠くまで行ってしまっていた。馬場長生はその場に立ち尽くし、口を開きかけた。心の中では馬場輝の名前を呼びたい衝動が何度も湧き上がったが、最後には頭の中に残されたわずかな理性が、喉元まで出かかった声を飲み込ませた。

このような状況で無理に身元を明かせば、計り知れない結果を招くことになるだろう。

馬場輝が父親である自分の存在を知っているかどうかはさておき、少なくとも登美子の意思は尊重しなければならない。これ以上登美子に嫌われるわけにはいかなかった。

しばらくの間は足立区に来る機会が多くなるだろう。また登美子に会えるチャンスがあるかもしれない。諦めるつもりはない、必ず登美子との関係を取り戻すために努力を続けるつもりだ。