第562話:ああ、まさに完璧な一日(2話追加)

前回会った時にあんなにアバンギャルドな格好をしていたのも納得だ。

「それで、これから東京の高校に進学するの?」馬場絵里菜は何気なく尋ねた。

井上雪絵は頷いた。「うん、お爺さんも年だから、そばにいて一緒に過ごしたいの。だから留学はやめて、ただ学校はまだ決めてないんだけど。」

留学という言葉を聞いて、進藤隼人の目に羨望の色が浮かんだ。

「お名前は?」馬場絵里菜は相手の名前をまだ知らないことに気づいた。

「雪絵って呼んでくれていいよ。」お互いの距離を縮めようと、井上雪絵は賢く愛称で呼んでもらうことにした。

馬場絵里菜は頷いて、続けて言った。「私は第二中学校で、新学期から高校2年生になるの。うちの学校はいい学校だから、考えてみてもいいかもね。」

そう言いながら、隼人を見て付け加えた。「弟の隼人は市立第一高校にいるの。多分東京で一番教育レベルが高い学校だと思うから、そこも考えてみたら?」

井上雪絵はその言葉を聞いて、無邪気な憧れの表情で馬場絵里菜を見つめた。「じゃあ、もし私が第二中学校に行ったら、絵里菜お姉さんの後輩になれるってこと?」

井上雪絵は幼い頃から井上お爺さんと井上裕人の保護のもとで育ち、その純真さは骨の髄まで染み付いていた。彼女の全体的な雰囲気や表情は極めて自然で、人に不快感を与えるどころか、むしろ強い保護欲を呼び起こすほどだった。

同じような表情を馬場依子にも見たことがあったが、その差は...

まるで実物と広告写真の違いのようだった。

馬場絵里菜は笑顔で頷いた。

「じゃあ、絶対考えてみる!」井上雪絵は特に確信に満ちた口調で言った。

彼女は純真で無邪気だが、頭の回転は速く、恋愛経験はなくても敵陣に潜入する理屈くらいは分かっていた。

絵里菜お姉さんのことが大好きで、一目で性格が良くて付き合いやすい人だと分かった。それに、絵里菜お姉さんと友達になれば、お兄さんに会える機会も増えるはず。まさに一石二鳥だった。

ああ、今日は本当に完璧な一日だった。

「お兄さん、お名前をまだ聞いていなかったんですけど。」井上雪絵はタイミングを見計らって、さも何気なく尋ねた。

前回お兄さんの名前と連絡先を聞かなかったことで、何日も落ち込んでいたので、今回はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。

馬場輝は特に深く考えずに答えた。「馬場輝だ。」