馬場絵里菜は笑って黙っていた。この女の子は面白いと思った。
「順番待ちですか?」井上雪絵は皆に尋ねた。
馬場輝は頷いて答えた。「今来たばかりで、店員さんが30分ほど待つと言っていました。」
井上雪絵はこれを聞いて、チャンスが来たと思った。このチャンスを逃すなんてバカげている!
「じゃあ、一緒に食べませんか?」井上雪絵は遠慮なく誘いを出した。
馬場輝は驚いた表情を見せた。相手が突然一緒に食事に誘うとは思っていなかったようだ。
たった一度会っただけなのに、こんな唐突に一緒に食事をするのは少し突飛すぎるかもしれない。
しかし、井上雪絵のあの純真な顔を見ると、きっぱりと断ることはできなかった。
どう切り出そうか考えていると、井上雪絵がまた口を開いた。「お兄さんは前回私を助けてくれたのに、病院に連れて行かせてくれなかったし、服と医療費も払わせてくれませんでした。今回の出会いも縁ですから、ご飯をご馳走させてください。」
「そんなに気を遣わなくていいよ。」馬場輝は少し困ったように笑いながら説明を加えた。「他の人でも同じような状況なら、見かけたら助けるよ。」
馬場輝のその言葉に少しも不快感を覚えなかった井上雪絵は、むしろ心の中で、お兄さんは正義感が強いから、私一人のためだけじゃないのは当然だわ!と思った。
「でも、私が出会ったんですよ!」井上雪絵は目的を達成するまで極めて忍耐強く、そして特に機転の利く考えで、馬場輝を説得するのは難しそうだと悟ると、馬場絵里菜の方を向いて言った。「絵里菜お姉さん、一緒に食べましょう?でないと、皆さんすごく長く待たなきゃいけないですよ。」
馬場絵里菜はずっと横で井上雪絵を観察していた。彼女の目の中の熱意と期待に満ちた眼差しから、何かを感じ取ったようだった。
「いいわよ!」
馬場絵里菜はあっさりと承諾した。
馬場輝は驚いて目を見開き、妹を見つめた。その表情には「どういうこと?」という疑問が書かれていた。
馬場絵里菜は淡々と笑って言った。「こんなに誘ってくれているのに、断るわけにはいかないでしょう?」