井上雪絵は興奮と喜びで顔を輝かせながら、手の置き場に困り、輝く瞳で馬場輝を見つめていた。
彼女は大好きな兄さんとの縁がまだ続いていると思っていた。スイーツショップで半月近く待ち続けても会えなかったのに、ふらっと入ったステーキハウスで出会えるなんて。
まさに、意図的にやろうとしても上手くいかないのに、思いがけず良い結果になるものだ。
これは、天の配剤なのだろうか?
突然現れた井上雪絵に、そして今回の可愛らしい装いに、馬場輝は一瞬反応できず、疑問符を浮かべた表情で彼女を見つめていた。
馬場絵里菜と隼人も同様で、二人ともこの少女を見たことがなかった。その少女の目から溢れんばかりの興奮の色は、明らかに馬場輝に向けられていた。
馬場絵里菜は不思議そうに二人を交互に見つめた。兄のことを一番よく知っている彼女は、兄が異性の友達はおろか、友達さえもほとんどいないことを知っていた。
確かに兄は最近恋愛をしていたが、結末は良くなかった。兄を傷つけたその元カノには会ったことはないが、考えてみれば、自分と同じくらいの年齢のこのかわいい女の子のはずがない。
兄は...そんな常軌を逸した行為はしないはずだ。
「あなたですね!」
一世紀ほど長く感じられ、もう兄さんに忘れられたかと思った時、馬場輝は突然彼女の顔を思い出した。
雪絵は鶏がコメをつつくように激しく頷いた。「はい、私です!兄さん、思い出してくれましたか?」
馬場輝は微笑んで頷いた。「今日は前回と服装が全然違うから、すぐには気づかなかったんだ。」
その何気ない微笑みは、まるで眩しい光線のように瞬時に井上雪絵の目を奪った。目が眩んで、世界中がピンク色の泡で満ちているかのようだった。
ああ、かっこよくて男らしくて、笑顔も優しい、なんて素敵な人なの。
この世界で私以外に、こんな完璧な兄さんにふさわしい人なんていない。
しかし、鉄壁の直男である馬場輝は、井上雪絵の熱い視線に気付くはずもなく、不思議そうな顔をした妹に説明を始めた。「彼女は前に君の誕生日ケーキを買いに行った時に、泥棒に遭遇した時の女の子だよ。」
そう聞いて、馬場絵里菜は納得したような表情を見せた。
この件について絵里菜は知っていた。兄は怪我までしたし、おまけに二人のケーキが取り違えられるという笑い話になった。
「絵里菜姉さんですよね?」