第560話:これは、天の配剤なのか?

井上雪絵は興奮と喜びで顔を輝かせながら、手の置き場に困り、輝く瞳で馬場輝を見つめていた。

彼女は大好きな兄さんとの縁がまだ続いていると思っていた。スイーツショップで半月近く待ち続けても会えなかったのに、ふらっと入ったステーキハウスで出会えるなんて。

まさに、意図的にやろうとしても上手くいかないのに、思いがけず良い結果になるものだ。

これは、天の配剤なのだろうか?

突然現れた井上雪絵に、そして今回の可愛らしい装いに、馬場輝は一瞬反応できず、疑問符を浮かべた表情で彼女を見つめていた。

馬場絵里菜と隼人も同様で、二人ともこの少女を見たことがなかった。その少女の目から溢れんばかりの興奮の色は、明らかに馬場輝に向けられていた。

馬場絵里菜は不思議そうに二人を交互に見つめた。兄のことを一番よく知っている彼女は、兄が異性の友達はおろか、友達さえもほとんどいないことを知っていた。